2012年5月28日

生活保護制度は誰のため?


生活保護も不正も増、自治体調査に限界  2012.5.26 01:13  msn産経ニュース 
人気お笑いコンビ「次長課長」の河本(こうもと)準一さん(37)の母親が今年4月まで受給していたことでクローズアップされた生活保護制度は、生活困窮者に対し、最低限度の生活を保障する“最後のセーフティーネット”といえる。高齢化や不況を背景に受給者数が過去最多を更新し続ける一方で、不正受給も増加の一途をたどっている。厚生労働省によると、今年2月に全国で生活保護を受給した人は209万7401人。戦後の混乱の余波で過去最多だった昭和26年度の数字を昨年7月に上回って以降、8カ月連続で最多を更新している。平成24年度は生活保護費として約3兆7232億円が当初予算に計上された。不正受給も22年度までの5年間、増加し続けている。22年度は過去最悪の2万5355件、計約128億7426万円が不正に支給された。不正で最も多いのは収入がありながら「ない」と偽って申告するケース。今月18日には年収が1億円以上あるのに熊本市から生活保護を受けていた投資勧誘業の男が熊本地裁で懲役3年、執行猶予5年、罰金3000万円の判決を言い渡された。不正が絶えない背景には扶養義務を親族がどこまで負えるかについての判断や確認が難しいこともある。生活保護は原則として世帯単位で決定されるため、河本さんと別居する母親は、別世帯として判断される。民法では親族間の扶養義務が定められ、保護が申請されると、保護決定を行う自治体が親や子供など扶養義務者による仕送りの可否などの調査を実施する。 

ただ調査への回答は自己申告で、離れて住んでいる親族には文書で調査を行うことも多い。申請者親族の資産調査は可能だが、調査で照会を受ける親族らには法律上の回答義務はなく、銀行などに個別に確認するにはとても手が足りない。河本さんは会見で「収入が安定せず、いつ仕事がなくなってもおかしくない不安の中でやっていた」と説明し、自分の判断で母親への援助額を決め、その一方で生活保護を受けさせ続けていたと説明した。東京都のある自治体の担当者は「立派な家に住んでいる親族に『住宅ローンがあるから』『子供の教育にお金がかかる』と断られたこともあった」と話す。厚労省の担当者は「収入が不安定でも、その時点で扶養可能な収入があるのに扶養いただけない場合は、文書だけでなく職員が出向き状況を確認して相談する必要がある」としている。 
■生活保護 最低限度の生活を保障し自立を助ける制度。国が定める最低生活費に比べ収入が少ない世帯に差額分を支給する。食費や光熱費に充てられる「生活扶助」、家賃に当たる「住宅扶助」などがある。費用は国が4分の3、地方自治体が4分の1を負担するが、自治体、家族構成、年齢により保護を受けられる基準額は違う。例えば、東京23区に住む夫33歳、妻29歳、子供4歳の家族が保護を受けた場合、生活扶助は17万2170円。民間住宅を借りる場合は、さらに上限6万9800円の住宅扶助が出る 。  
他、「生活保護制度めぐりさまざまな問題 「マニュアルDVD」も」  フジネットワークニュース 2012.5.25 18:51などもご参照ください。


今回は、生活保護について取り上げてみたいと思います。

厚労省によれば、「生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、
その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、
健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、
自立を助長することを目的」とする趣旨で施行されています。
すなわち、社会保障のひとつです。


人間、どのように頑張っても、
様々な要因で自立した生活を送れなくなることがあります。
リストラ、病気、家族の問題などが、その代表例と言えるでしょう。
「困ったときはお互い様」で、
こうした状況にある人を公費で補助することは、
決して悪い事ではないと思います。
しかし、今回の報道で問題となっているのは、
生活保護の受給者が過去最大になり、公費を圧迫していること、
また、本来、生活保護がなくても自立できる人たちが、
その恩恵にあずかっている、という事です。

ただでさえ、切羽詰まった国や地方自治体の台所事情の中、
本来必要でない部分の支出を余儀なくされることは、
国の苦しさだけでなく、財政を支えている国民にとっても、
受け入れられられるものではありません。
それだけでなく、「自立を支える」ための制度が、
逆に自立しない、依存的な人たちを生んでいるという事は、
社会的に大きな問題です。

現在、生活保護の申請に関して、その窓口となる地方自治体は、
申請者の内情について調査を行う権限は大きくありません。
それは、資産調査などを行う場合、申請者の同意が求められるからです。
従って、仮に、申請者が虚偽の資産報告をしてきても、
その真意を明らかにする仕組みがないのです。
こうした現状は、是正されるべきだと思います。

しかし、今回の報道は別の側面からみた問題もはらんでいます。
それは、本当に生活保護を必要としている人が、
今後、申請しづらくなったり保護を受けられない、
といった状況を生むという事です。
繰り返しますが、自分個人の力ではどうしようもなくなった時、
それを一時期支え、自立を促す制度は、
国家にとって非常に重要なものだと思います。

厚労省審議会の委員である、長崎大学教授の林徹氏から、
以下のような私信が送られてきました。
 「社会保障分野の専門家に共通していると感じることは、
 マズロー流の低次欲求にしか関心を持っておらず、
 人が働くことと高次欲求との関係を軽視している、ということです。」

マズローは、人間の欲求を、5段階に分けた説を提唱しました。
低次の欲求とは、人間の本能ともいうべき、
「食べる、飲む、寝る」といったものです。
これに対して、高次の欲求とは、
人間関係を築いたり、人に認められたり、自己実現の可能性を追求する、
といったものです。
林氏の指摘は、非常に的を射ていると感じます。
なぜなら、本来、生活保護の目指すものは、自立であり、
とりもなおさず、それは「社会的」な自立です。
ところが、多くの議論は、
生物的に生きられる最低ラインの議論に終始しています。
憲法25条に謳われる「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する上では
労働=高次の欲求という側面からの議論が絶対に必要であると思います。

また、このような観点から、生活保護の見直しが行われれば、
誰が、それを必要とするのかといった、
合理的、理性的な見極めが今よりは出来るようになるのではないでしょうか。
少なくとも、現状の生活保護は、
「子ども手当」同様のばらまき政策である感は否めません。


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2012年5月27日

細菌性髄膜炎(Hib)ワクチン報道に関する、多いなる懸念


細菌性髄膜炎(Hib)ワクチンについて、以下のような報道がされました。



小児ワクチンで乳児3人死亡」5月26日 5時19分 NHK NEWS web

幼い子どもがかかる「細菌性髄膜炎」を予防するワクチンを接種した乳児3人が、接種のあと死亡したことが分かりました。

厚生労働省で25日開かれたワクチンの副作用についての調査会では、去年12月から先月までに幼い子どもがかかる「細菌性髄膜炎」を予防する、肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンを接種した6か月未満の乳児3人が、接種のあと死亡したことが報告されました。
これについて、厚生労働省は3人のうち2人は別の病気が原因で死亡したとみられ、ワクチンの接種との明確な因果関係は認められないほか、もう1人については医療機関から詳細な報告が来ていないと説明したということです。
細菌性髄膜炎を予防するワクチンを巡っては、接種して死亡したケースがこれまでに合わせて16例報告されていますが、いずれも接種との明確な因果関係は認められないことから、厚生労働省はワクチンの接種を行っても問題はないとしています*。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120526/k10015390531000.html

*http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008fcs.html#shingi28



ワクチンに関しては、今までも発言してきましたが、
今回の報道に関しては、違和感を感じます。

ワクチンは、国民や、世界人口といった、大きな集団を、
疾患から防ぐための重要なツールです。
どの薬剤にもあることですが、必ず副反応はあります。
そのワクチンに対して、合わない体質を持っていた場合などで、
死亡したり、重篤な後遺症を残すことがあります。
多くのワクチンにとって、こうした重篤な副反応はまれですが、
ゼロではありません。
しかし、その可能性を鑑みても、マスを病気から予防する、
という利点が上回った場合に導入するのが、ワクチンです。

例えば、仮に、重篤な過敏反応で、10万人に1人は死亡する可能性があるが、
もしその病気にかかったら、約10%(10万人のうち1万人)は死亡する、
感染症があったとしたらどうでしょうか。
数だけで単純比較は出来ませんが、こんな病気の場合は、
ワクチンを全国民に打つのが、政府の役割だと思います。
それは、10万人に1人の確率で起こるリスク回避を優先したために、
それ以上の人たちが、死の危険性がさらされるという事になるからです。
これを「公衆衛生」学的考えと言います。

政府、すなわち厚生労働省は、国民というマスを
いかに危険にさらさないか、という政策を行うところですから、
まさしく、公衆衛生行政を行う役所です。

ところが、この報道をみると、Hibワクチンを国の責任において実施し、
子どもを、当該疾患から守ろうとしているのだろうか?
と頭をかしげるばかりです。

いったい、3人とは、何人受けたうちの3人なのでしょうか。
10人受けて3人亡くなったのであれば、大変なことです。
しかし、100万人に接種されて、となると、話は違ってきます。

因果関係について調査をするのは当然ですが、
あたかも、このワクチンが非常に危険な代物であるかのような
過大広告をしたいのか、と疑いたくなります。
かつて、”新型”インフルエンザが流行した際、
「1人亡くなった、2人亡くなった」という報道ばかりがされました。
集団における、健康被害を考えるとき、
個別症例(分子)ばかりを数えて、母数(分母)を示さなかったら、
社会的なインパクトは論じることが出来ません。

いつもながら、プロ意識が全く欠如した厚労省の行動と、
それと同じくらい稚拙なタイトルをつける報道機関に、
大いなる不信感を抱いたところです。
仮にも「公衆衛生」を司る行政機関がこのような姿勢では、
Hibワクチンを必要な子供に速やかに接種する、という重要な課題に対して、
要らぬ妨害が入ることを、非常に危惧しています。

今回の報道に関して、御意見あるかたは以下のサイトから、
ご投稿いただければ幸いです。
http://www.nhk.or.jp/css/

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2012年5月14日

医師国家試験問題から読み解く、厚労省の現実離れぶり


~阿呆はいつも彼以外のものを阿呆であると信じている~芥川龍之介

桜の季節も過ぎ、初夏を感じさせるこの頃です。
久しぶりにブログ更新します。
今回は、今年の医師国家試験問題を引用し、
そこから、今の厚生行政のおかしさを指摘したいと思います。

その問題とは、これです。

52歳の男性。糖尿病治療目的で外来通院中である。
体重を減量する必要性を本人も理解しているが、
これまでの5回の受診で体重が漸増している。
身長165 cm、体重82 kg。HbA1c 7.6 %(基準4.3~5.8)。
医師の発言として適切なのはどれか。
a  「何度説明しても無駄ですね」
b  「減量では何がつらいですか」
c  「体重が増えて透析になっても知りませんよ」
d  「次回までに体重が減らないと私は責任が持てません」
e  「今回できなかった分も加えて次回までに減量しましょう」

HbA1cというのは、糖尿病のコントロールの善し悪しを示すもので、
()にあるように、コントロールが良い場合は、低い数値に保たれます。
この症例は、明らかにコントロール不良な糖尿病患者です。

さて、みなさんはこの問題を読んでどの答えを選ぶでしょうか。
おそらく、正解は「b」です。
えー、どうして?と思われる方、自分が思ったとおりだった、と納得される方、
様々な反応があると思います。
なぜ、正解が「b」かというと、その背景は次のように考えられます。

まず、医師たる者、患者を突き放しネガティブな事を言ってはいけない、
という姿勢が求められる、という前提があります。
それとともに、患者の困っている事を把握して、
それを解決してゆくことによって、減量を達成させることが重要である、
という強いメッセージが受け取れます。
こんな解説をしていると、私自身、なんて優等生的な解答をしているのか、
悦に入ってしまいそうです。

でも、現実は本当にそうなのでしょうか。
患者の弱点を把握して指摘すれば、その人は減量に成功するのでしょうか。

この国試問題を見たとき、特定健診が頭に浮かびました。
特定健診とは、いわゆる、メタボ検診のことです。
具体的には、40歳~74歳までの公的医療保険加入者全員を対象に、
腹囲の測定及びBMIを計算し、
基準値(腹囲:男性85cm、女性90cm / BMI:25)以上の人は
さらに血糖、脂質(中性脂肪及びHDLコレステロール)、血圧、
喫煙習慣の有無から危険度によりクラス分けします。
そして、クラスに合った保健指導(積極的支援/動機付け支援)
を受けるというものです。


みなさん、ご自分の事として考えてみてください。
腹囲が多少大き目だから、コレステロール値が高いと言われて、
そんなに簡単に食生活を立て直し、規則正しい生活をするでしょうか。
たかが、検診医の一言だけで減量が成功するのだったら、
なぜ、ダイエット特集がこれ程「うける」のか、不思議でなりません。
たいていのメディアは、ネタが無くなったら「ダイエット特集」を組みます。
何度くりかえされても大人気の「ダイエットに関する話題」が続くことは、
それだけ減量できない人が多いことを示している、とも言えます。
また、指導をする医師自身がメタボ体型だったりすると、
その口からでる「ご指導の言葉」自体が、胡散臭さを醸し出すことだってあります。

このように、人の習慣をかえることはそんなに簡単なことではありません。



また、この検診は、メタボリック・シンドロームなるものが、
生活習慣病の大きな原因のひとつであって、
この症候群をコントロールすることで、医療費削減が見込まれる、
という前提にたっています。
しかしながら、この前提は推論であって、
メタボ検診が医療費を削減するなどという科学的根拠ははっきりしません。



国試問題の答えをもう一度みてみましょう。
答えは「b」だろうと書きましたし、おそらくそれが正解です。
しかし、現実の世界では、aからeまで、どれも有り得る解答です。
おそらく、この問題は、臨床現場をよほどわかっていないか、
あるいは、メタボ対策を推奨し、
厚生労働省のお褒めをいただきたい人が作ったのではないか、と思います。

私自身、この陳腐な問題をみて、現実の厚生行政も、
現実とはかけ離れた、机上の空論で作成されている事実がダブって、
笑うに笑えない気持ちになりました。

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2012年3月12日

忘れてはならないもの(3.11負の遺産)

2011年、史上最大級の地震と、原発事故が起こってから1年が過ぎました。
各地で追悼の式典などが行われ、メディアも特集を組みました。
私自身、親族が、仙台市若林区に居住しており、連絡が取れない状況でした。
それ故、被災して命を落とされた方々のご家族ならびにご友人達の悲しみを、
少しは理解できるのではないか、と感じています。

その意味で、鎮魂という儀式はとても大切なものだと思います。
しかし、それと同時に忘れてはならない事があります。
それは、震災に引き続く原発事故で政府がいかに対応を怠ったか、という事です。

その中でも最も重要な問題は、放射線被ばくです。
放射線被ばくには、外部被ばくと内部被ばくがあります。
外部被ばくは、外側についた放射線ですから、
衣類を脱いだり、シャワーを浴びれば取れます。
けれども、体の中に入った放射線の影響は、
それが体外に出てゆくまで待たねばなりません。
どれくらい体内に止まるのかは、放射線の種類によって異なります。
一般的に、放射線の影響が少なくなる物差しとして「半減期」が使われますが、
例えばストロンチウムは、骨の中に取り込まれ、
体内動態上、出てゆきにくいものですから、
一概に半減期だけをめやすにする訳にもいきません。

放射線は、食物や呼吸と共に体内に取り込まれます。
もっとも高い線量が降り注いだのは、3月から4月です。
内部被ばくを少なくするためには、高い放射線量の時期、
できるだけ線源から遠くに移動することです。
しかし、それを躊躇した政府によって、
多くの人たち、特に、放射線の影響を受けやすい小さな子供たちは、
浴びなくても良い、放射線被ばくをしたのです。

その影響はどうなのでしょうか。
放射線の健康被害は様々なものがありますが、
特に問題となる発がんのリスクは確実に増えたと言えます。
そして、その程度を調べるには、将来的に追跡して、
どの程度がんを発生するかを調査する以外にはありません。
しかし、政府(特に厚生労働省)は、初期のデータ集めを怠りました。
データはごく初期に取り始めなければ意味がありません。
それは、時間が経つにしたがって、情報があやふやになり、
信ぴょう性のある結果が出せないからです。

1.すみやかに避難させなかったこと
2.解析に値するデータ収集を怠ったこと
はもっとも大きな政府の責任です。
この無責任体質は今に始まったことではありません。
水俣病、薬害、インフルエンザ、など、すべて同じことの繰り返しです。
今後、国家を揺るがす健康危機は再度訪れるでしょう。
しかし、これ以上国民を危険にさらすことはやめていただきたいものです。
今回の事故対応について、正確な事実をまとめ、
政府の問題点について明らかにすることが、
震災で被害を受けた方たちへの一番の償いになる事です。
それを決して忘れてはならないと思います。

そのような思いをこめて書いたのが今回出版した、『厚労省が国民を危険にさらす』です。
ご一読いただければ幸いです。

2012年3月9日出版(ダイヤモンド社)












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2011年10月9日

国はIPV(ポリオ不活化ワクチン)輸入を早急にすべき!

中国でポリオの症例が、27年ぶりに発生しました。
中国情報筋によれば、
9月28日現在、10人の確定例が報告されているとのことです。

http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2011/10051613.html

ポリオには有効なワクチンがあります。
予防効果が100%近いワクチンがある病気は、
ワクチンを世界中の子供達に打つことによって、
その病気を地球上からなくす(根絶)ことが可能です。
ポリオはその代表例と言えるでしょう。

今まで、ポリオワクチンとしてOPV(生ワクチン)が広く使われてきました。
しかし、ポリオ生ワクチンを接種することにより、
ポリオが発生することがわかってきました。
そのため、世界100カ国以上では、IPV(不活化ワクチン)を導入しています。

わが国は、ワクチン途上国と称されるほど、
ワクチン行政が立ち後れた国です。
その状況で真っ先に取り入れなければならないのが、IPVです。
しかしながら、国はIPV導入を先延ばしにしてきました。
しかし、5月31日、OPVによるポリオ患者発生が報告されることもあり、
より安全で効果的なIPV導入についての議論が活発化しています。

厚生労働省は、早ければ来年度にIPV導入をめざす、としていますが、
わずか4時間弱で行かれる中国から、
いつポリオが輸入されるかわかりません。
私の勤務する羽田空港でも毎日10便の中国便がやってきます。

手に入りにくいワクチンならともかく、
世界でこれだけ多く使われているワクチンを、
なぜ、来年まで待たなければならないのでしょうか。
早急なIPV輸入を推し進めるべきだと思います。


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2011年9月8日

厚労大臣のタバコ料金引き上げ発言に思うこと

小宮山厚労相「たばこ1箱700円に」 増税を主張

 小宮山洋子厚生労働相は5日、たばこ税に絡んで「年100円ずつ引き上げ、(販売価格を)1箱700円ぐらいにしたい」と語った。厚労相はたばこ増税による禁煙推進が持論。「喫煙者の8~9割が本当は禁煙したいと思っている」と述べ、健康を守る目的から値上げが必要と主張した。

 厚労相は「いろいろなデータをみると、(販売価格で)700円までは税収が減らない」と強調。さらにたばこに関する行政について「税収のために財務省が所管するのはおかしく、健康のために厚労省が所管するようにしたい」と述べた。

 たばこ税は昨年10月に1本あたり3.5円引き上げられ、マイルドセブンの場合は1箱の値段が300円から410円に値上がりした。

 たばこ増税をめぐって、野田佳彦首相は財務相時代に「税制を通じたおやじ狩りみたいなものだ」と述べたことがある。首相は愛煙家だという。

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819591E2E7E2E3828DE2E7E2EBE0E2E3E39797E0E2E2E2;at=ALL

2011年9月5日 19:31配信 日本経済新聞




厚労大臣のタバコ料金引き上げ発言が、
閣内での波紋を呼んでいるようです。

政治的な意味合いはともかく、
公衆衛生的には、喫煙は大きな問題であり、
この問題に関して、国民の健康問題を
司る監督官庁の長が言及したこと自体は、評価すべきと思います。

日本はタバコに対して、非常に甘い国です
(過去記事:たばこに甘いニッポン参照)。

タバコを吸うことは個人に自由である、という主張を聞くことがありますが、
タバコは多くの有害物質を出します。

その中には、発がん物質も多く含まれます。
タバコを吸うことは、自分の健康を損ねることだけでなく、
周りの人たちの健康にも影響を及ぼします。

自分の権利を最優先にし、他人への被害は顧みない行為は、
どんな場合においても認められる事ではなく、
タバコだけが免罪符を得る理由は、どこにも見当たりません。

また、喫煙はがん、心疾患、喘息など、様々な疾患の原因であることから、
喫煙者の増加は、医療費増加に直結する、大きな社会問題です。

9月7日の米国CDC発表によれば、
「喫煙と受動喫煙により、毎年44万3千人が死亡している」であり、
「喫煙による被害は、健康問題にとどまらず、
年間約18兆円の医療費増加に加え、労働力の減少を生む」としています。

日本の公衆衛生にたずさわる人たちは、
今回の発言に関して、どのように受け止めているのでしょうか。
今回の発言を、「単なる政治的なもの」とせず、
専門家としての積極的な発言を期待します。

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2011年6月29日

メディアが取り上げない、被災地の感染症対策

2011年3月11日に発生した、巨大大地震は、
3カ月が経過した今でも、大きな後遺症を残している。
仮設住宅2万8千戸が完成したものの、
避難者数は、9万人、不明者約8千人、といった状況である。

このような状況が続く中で、
感染症対策は大きく立ち遅れている分野の一つである。

何故、感染症対策が問題になるかと言えば、大きく分けて2つある。
一つには、衛生状態が決して良いとはいえない、避難所生活を続けることにより、
肺炎や、下痢性疾患などが流行することである。

もう一つは、予防接種の不徹底により、
ワクチン予防可能疾患(Vaccine Preventable Diseases)の蔓延が起こり、
子供たちが、当該疾患で死亡したり、重篤な後遺症に、
生涯苦しめられ、可能性が生じる。

まず、避難生活を営む人たちの中で、
今後注意をすべきであろう感染症について、論じてみる。

まず、重要なのは、急性胃腸炎である。
急性胃腸炎の原因としては、種種のウイルスや細菌がある。
まず、流行が懸念されているのが、ウイルス性の腸炎であり、
代表的なものは、ノロウイルスやロタウイルスによるものだ。
これらのウイルスは、感染力が強く、
少量のウイルスで感染すると考えられている。
感染経路は、主に不適切なし尿による、糞口感染である。
予防のためには、し尿や、吐物の適切な処理、手洗い、
汚染された衣類を捨てる、などがある。

ノロウイルスやロタウイルス性腸炎は、震災初期の、衛生状態が悪い中で、
もっとも流行が懸念されたものであるが、
震災から3カ月が経過した現在でも、流行が報告されている。
http://www.kaiteki-kadenlife.com/virus/virus_002/205450.html

実際、被災地といっても、既に仮設住宅が整っている場所もあれば、
未だに、上下水道の整備されていない、避難所が乱立する地域もあり、
その差による、感染症発生率の違いが、今後、もっと顕著になってゆくであろう。

ウイルス性腸炎に加えて、梅雨を迎えたこれから、
病原性大腸菌やサルモネラ菌による食中毒も多くなってくる。
特に、衛生状態の悪い避難所生活を続けている人たちの間での流行は、
もっとも懸念されるところである。

感染症の問題は、人間間だけにとどまらない。
家畜や、ペットなどの死骸が放置されている地区では、
ハエや蚊が多量発生している。
本来動物に寄生する病原体が、ハエや蚊、
場合によってはゴキブリ、ネズミ等を介して、人にうつることがある。

こうした病気を、「動物由来感染症」と呼ぶが、
コレラ、チフスなど、かつて日本で流行を起こした感染症が、
猛威を振るわないとは限らない。

また、昆虫を媒介とした、「ツツガムシ病」も流行のおそれがある。
ツツガムシ病は、リケッチアであるツツガムシに刺されて感染する。
熱が出て死亡する例もある。
3月に、福島でツツガムシ病が報告されており、
これから夏に向かう季節には、増えることが予想される。

今まで述べた感染症は、被災地のどこで、どの程度の規模で起こっているのか、
正確に把握できていないのが、実情である。
その、大きな理由としては、被災地の他の問題が多すぎて、
こうした、感染症にだけ、注意をむけられない、
という被災地の現状があるからだ。

被災地の医療活動は、感染症も含めて、
DMAT、FETPや医療ボランティアの活動に支えられてきた。
災害が起こった1,2カ月は、ボランティアも多く入り、物資も届く。
メディアも関心を持って、取り上げ、
被災者も、周りの助力に関して、感謝の念を抱く。
所謂、「ハネムーン期」と呼ばれる時期である。

しかし、3カ月が過ぎた今、メディアの関心も薄くなり、
ボランティアも自分たちの本来の仕事に帰ってゆくようになった。
インフラが速やかに回復した地域と、
そうでないところの格差感が広がっている。

整備が立ち遅れたところからは、
以上述べたような感染症のリスクが高い。
こうした地域への、専門家派遣などの重要性は、
多くの人が指摘するところである。
それはもちろん大切であるが、我が国に多くの人材がいるか、
といわれれば、そうではない。

被災地の行政は、疲弊している。
それは、彼らたち自身も、被災者であるからだ。
震災後に、避難所のトイレが、し尿であふれ返っている状況を見かねた医療者が、
地方自治体に改善を求めたところ、
「し尿の衛生管理は保健所(厚生労働省)だが、
処理施設自体は、国土交通省の管轄であり、
環境省にも連絡しなければ、動けない」
趣旨の事をいわれ、大変困ったという、話を聞いた。


縦割り行政の弊害、といってしまえばそれまでであるが、
し尿であふれ返ったトイレを放置すれば、
感染症が広がることは明らかである。
そして、それを処理するための枠組みがややこしすぎるために、
現場も、地方行政も、要らぬ労力を使うはめになる。

国が、平常時のような、法の枠組みを順守することに固執せず、
地方行政と、被災地の現場が、動きやすくするための、
「規制緩和」を速やかに、実行することが、最も求められることである。
これは、震災に限らず、どんな危機においても、当てはまる。

次に、第二の問題である、「ワクチン」である。
私は、この問題を、最も重要視し、
かつ、国として早急にとりくまなければならない、と思っている。

ワクチンには、必ず副反応がともなう。
稀ではあるが、重篤な副反応により、命を失うこともある。
しかし、その危険性を差し引いても、国民あるいは世界全体というマスと、
当該疾患から守るという、利益が上回るときに導入されるものである。
これは、正に、公衆衛生(Public Health)の概念そのものである。

日本は、諸外国に比べて、ワクチン対策に置いて大きく後れを取っている。
このことは、我が国の公衆衛生行政が立ち遅れていることを、明確に示している。

WHOが勧告しているワクチンの中で、
我が国が未だに導入していないものは多い。
その中には、接種しないことによって、
子供の命が失われる危険性があるものが多い。
例えば、細菌性髄膜炎(Hib)、B型肝炎、肺炎球菌、
ロタウイルス性下痢症、である。
また、接種によって、実際の病気が引き起こされることが明らかになって、
他国が取りやめている、ポリオ経口生ワクチン(OPV)を、
未だに使い続けている、珍しい国でもある。

また、導入しているワクチンも、「任意接種」という、
「打っても打たなくても良い」といった印象を与えかねない、
名のもとに、接種率が上がっていない、重要なワクチンもある。
Hibや、小児用肺炎球菌ワクチンが、この代表格であろう。

このように、平時においてもいい加減なワクチン政策が、
震災によって、より、悲惨な状況になっている。
それは、必要なワクチンスケジュールを管理する、
行政窓口が立ち行かなくなったり、
被災により、ワクチンを打つ医師がいなくなったり、
あるいは、ワクチンそのものが無くなってしまった、などの理由からである。

平時と違う状況としては、建物の倒壊や、瓦礫などによってけがをし、
汚れた傷から、破傷風が生じる、という例があげられる。
幼少時にワクチン(DPT)を打っていれば、
免疫が数年持続する、と言われているが、
震災によってこれが接種できない場合、
あるいは、決められた回数打てない、といった場合には、
感染する危険性が高まる可能性がある。
また、けがによって感染する疾患として、B型肝炎があげられる。
B型肝炎は血液を介してうつり、諸外国では、
出生とほぼ同時に打つことが、ルチンになっている。
しかし、我が国では、公費化されておらず
(ワクチン行政の一部に組み込まれていない)、
今後、将来にわたって、どの程度B型肝炎が発症するかは、
未だ不明である。調査が行われる、という話もきかない。

このような、「けが」などの震災前期に多く起こる病態に加え、
これから、長期的に考えてゆかなければならない疾患がある。
それらは、麻疹(はしか)、細菌性髄膜炎、
肺炎球菌と言った、重篤な疾患である。

いずれも、小児において、重要な病気である。
それは、罹った場合、命をおとしたり、
重篤な後遺症を残すことがあるからだ。
被災により、体力が低下した子供たちに、
今後広がる可能性が指摘されている病気である。

幸いにも、効果的なワクチンがあり、
VPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで予防可能な疾患)の代表であるが、
「幸い」という文言が、日本にはあてはまらない、のは、前述したとおりである。

また、もうひとつの懸念は、「日本脳炎」の流行である。
日本脳炎は、豚から、コガタアカイエカという蚊を媒介して、人間に感染する。
日本脳炎ウイルスは、ほとんどの場合、人間に感染しても、
無症状ですむが、約1/100 から1/1000の確率で、脳炎を発症する。
その場合の致死率は20から40%と高率である。

これまでは、コガタアカイエカが生息する、
南や西日本地帯が危険だとされてきたが、
病気を媒介する、コガタアカイエカの分布が、
北上している傾向があり、今後被災地でも、起こる可能性はある。
http://idsc.nih.go.jp/disease/JEncephalitis/QAJE02/fig02.gif

日本脳炎は、ワクチン接種で予防できる感染症の一つである。
しかし、2005年5月30日の、厚生労働省による、
日本脳炎ワクチン積極的勧奨の差し控え以降、
3~6歳での日本脳炎ワクチンの接種率が減っている。
現在では、徐々に回復していると推測されるが、
未だ100%接種をのぞむのは無理だろう。
http://idsc.nih.go.jp/disease/JEncephalitis/QAJE02/fig04.gif
 
繰り返すが、我が国の公衆衛生のインフラ整備は立ち遅れている。
それが、ワクチン政策に如実に表れている。

現在、被災地には、UNICEFが入って、活動をしている。
半世紀ぶりの日本への支援である。
その活動は、以下のサイトに紹介されている。
http://www.unicef.or.jp/osirase/back2011/1103_09.htm

「被災地の復興は、ボランティアの活動なしにはあり得ない」というのは、
誰もが実感するところであろうが、
日本は、GO(ボランティアとはよばないかもしれないが)、NGO問わず、
外部からの支援を効率的に活用することが、あまり上手くないのではなかろうか。

特に、海外のNPO受け入れについては、
もう少し、効率的に行ってもよいのではないか、というのが個人的な感想である。
言葉の障壁は、我が国にとって大きな問題であるが、
それ以前の問題として、政府や地方自治体が、
こうした「助けの手」を、なかなか受け入れられない、
「文化」のようなもの、が存在しているのではないか、と感じている。

繰り返すが、被災地における「感染症対策」は、十分ではない。
しかし、それが表立ってこないのは、
被災地の状況があまりに酷過ぎて、隠れてしまっているからである。
感染症対策の中で、最も重要なのは、衛生状態悪化による感染症の流行と、
ワクチン政策不備による、子供たちの重篤な感染症罹患である。
特に後者は、「次世代を担う世代を守る」、という国の根本的責任そのものだ。
被災地の感染症対策を、みて見ぬふりをせず、
国の最重要課題として取り組むよう、希望する。


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