厚労省は1999年当時、2010年までに喫煙人口半減という見通しを発表したが、これまでわずか7%減にとどまっている。
日本では毎年10万人超が喫煙関連疾患の合併症で亡くなり、英国のデータでも入院を必要とする疾患の40%がタバコに起因している。
医療経済研究機構が1999年度のデータに基づいた試算では、喫煙関連疾患による経済的負担(約7兆円)は、タバコ税収(約2兆円)をはるかに上回る。5兆円の損失ということになる。
先進国の大半は喫煙によるリスクとタバコの宣伝に対して厳しい姿勢を取っている。日本はWHOのたばこ規制枠組み条約(FCTC)に調印、批准したにもかかわらず、価格は先進国で最も低く、欧州の半分から四分の一。日本はFCTCに沿った行動を起こすべきだ。
日本経済新聞 サノティス・アベンティス日本社長(当時)フィリップ・フォシェ
2007年12月4日 夕刊5面掲載
たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約
(WHO Framework Convention onTobacco Control:略称WHO FCTC)は、
たばこを直接吸うことにだけでなく、
副流煙の被害をへらすことを目的とした条約です。
2003年5月21日に世界保健機関(WHO)
第56回総会で全会一致で採択され、
2005年2月27日に発効となりました。
この条約締約国は、たばこ消費の削減に向けて、
広告・販売への規制、密輸対策が求められます
(外務省による日本語訳あり)。
http://www.tbcopic.org/signature/
なぜこんなにたばこが問題視されるかというと、
たばこはがん、脳血管障害、心臓血管障害など
様々な健康被害をもたらすことが分かっており、
公衆衛生学的に大きな脅威だからです。
公衆衛生という概念は国や世界を病気から守るというものです。
たばこによる死者は毎年10万人以上というのですから、
社会的に大きな影響を与えていることがわかります
(2007年の死亡総数は1,108,334人)。
たばこは税収増加になるという意見もありますが、
労働力低下や医療費などによる7兆円の経済損失は
2兆円のたばこ税収を差し引いたとしても、5兆円のマイナスとなります。
これが毎年積み重なるわけです。
日本の大きな特徴として、
男性の喫煙率が年々低下しているのにもかかわらず、
女性の喫煙率が高くなっているということです。
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd100000.html
特に、20代、30代の若い世代の女性が
毎年約10%程度増えているのです。
1965年と比べるとなんと4倍となっています。
このような先進国の例を私は知りません。
女性の喫煙は、不妊や奇形児の確率を増加させることが
報告されていますから、
日本の少子化を助長する要因としても、
非常に重要です。
近頃、HPV(Human Papilloma virus)ワクチンの接種がさけばれていますが、
HPVウイルスの感染を予防することが、
どの程度子宮頸がんの死亡を減らすかは、
はっきりとは分かっていません。
(※ HPVV(子宮頸がんワクチン)公費助成とワクチン行政 参照)
ワクチン接種に関しては、異を唱えるつもりはありませんが、
たばこが子宮頸がんを増加させるという報告も出されている中で※、
たばこを吸いながらHPVワクチンを受けに行くのは
本末転倒という気がします。
たばこは国際的に、大麻と同列にランクされている麻薬です。
日本は、大麻を厳しく取り締まるのに対し、
たばこに対して非常に甘い国です。
「たばこは有害物質である」という認識の欠如は、
厚労省の対策に反映されています。
FCTCに批准しているのですから、
それに見合った喫煙対策をする国際的義務があります。
消費税をあげるよりも、たばこ税を年10%増加させる、
という議論がまずなされるべきでは無いでしょうか。
※Kapeu AS, Luostarinen T, Jellum E, et al
Is smoking an independent risk factor for invasive cervical cancer?
A nested case-control study within Nordic biobanks.
Am J Epidemiol, 15;169(4):480-8, 2008
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