2010年7月21日

Homœopathyに関する問題

「ビタミンK与えず乳児死亡」母親が助産師提訴

 生後2か月の女児が死亡したのは、出生後の投与が常識になっているビタミンKを与えなかったためビタミンK欠乏性出血症になったことが原因として、母親(33)が山口市の助産師(43)を相手取り、損害賠償請求訴訟を山口地裁に起こしていることがわかった。
 助産師は、ビタミンKの代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与えていた。錠剤は、助産師が所属する自然療法普及の団体が推奨するものだった。
 母親らによると、女児は昨年8月3日に自宅で生まれた。母乳のみで育て、直後の健康状態に問題はなかったが生後約1か月頃にし、山口市の病院を受診したところ硬膜下血腫が見つかり、意識不明となった。入院した山口県宇部市の病院でビタミンK欠乏性出血症と診断され、10月16日に呼吸不全で死亡した。
 新生児や乳児は血液凝固を補助するビタミンKを十分生成できないことがあるため、厚生労働省は出生直後と生後1週間、同1か月の計3回、ビタミンKを経口投与するよう指針で促している。特に母乳で育てる場合は発症の危険が高いため投与は必須としている。
 しかし、母親によると、助産師は最初の2回、ビタミンKを投与せずに錠剤を与え、母親にこれを伝えていなかった。3回目の時に「ビタミンKの代わりに(錠剤を)飲ませる」と説明したという。
 助産師が所属する団体は「自らの力で治癒に導く自然療法」をうたい、錠剤について「植物や鉱物などを希釈した液体を小さな砂糖の玉にしみこませたもの。適合すれば自然治癒力が揺り動かされ、体が良い方向へと向かう」と説明している。
 日本助産師会(東京)によると、助産師は2009年10月に提出した女児死亡についての報告書でビタミンKを投与しなかったことを認めているという。同会は同年12月、助産師が所属する団体に「ビタミンKなどの代わりに錠剤投与を勧めないこと」な
どを口頭で申し入れた。ビタミンKについて、同会は「保護者の強い反対がない限り、当たり前の行為として投与している」としている。
(2010年7月9日 読売新聞)



Homœopathyとは、代替的治療薬を用いるもので、
1796年、ドイツ人医師SamuelHahnemannが提唱したものです。
今回の記事は、通常新生児に与えるべきビタミンKを与えず、
remediesと呼ばれる薬を投与したために、乳児が死亡したというものです。

ビタミンKは、血液を固めるために必要な成分であり、
骨の代謝にも関わる大切な物質です。
ビタミンKは大腸に常在する細菌から生成されますが、
新生児はそれを作る力が弱いので、
ビタミンK欠乏症になりやすいと言われています。
母乳だけを与えた場合、生まれてから1週間のうちに、
0.25-1.7%の新生児(10万人対2-10人)が
VitaminK欠乏になるという報告があります。
このため、0.5-1.0mgのビタミンKを含んだシロップを、
生まれてからなるべく早いうちにのませるよう、
アメリカ小児科学会の勧告が出されています。

ビタミンKが足りなくなると、血が固まりにくくなりますから、
出血をおこしやすくなります。
今回のように、頭に出血が起こると、意識障害、発達障害などが起こったり、
死亡することがあります。
これはシロップ一つで防げるわけですから、
そのシロップを与えないというのは重大な問題です。

Homœopathyに関する研究は数多くなされていますが、
その有効性は確立されていません。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1874503/?tool=pmcentrez
http://www.jclinepi.com/article/S0895-4356(99)00048-7/abstract
これらの結果を受けて、イギリスNHS(National health Service)では
2010年2月、homœopathyを国民医療保険から外すことについて、言及しています。
http://www.parliament.uk/business/committees/committees-archive/science-technology/s-t-homeopathy-inquiry/

日本ではplacebo(偽薬)と remediesの有効性を比較するための
大規模RCT等は行われていませんが、
厚労省はhomœopathyを代替医療の一つとして容認したスタンスをとっているようです
(2010年1月28日の予算委員会で長妻厚労相がホメオパシーに言及しています)。
人間の自然治癒力を高める、ということ自体は十分理解できる事です。
しかし、B型肝炎carrierの母胎から生まれる児へのワクチン接種のあり方など、
Homœopathyに関わる事例は今後も増えてくるものと思われます。
厚労省は早急に問題点を把握し、調査研究も含めた対処をする必要があると考えます。


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