2010年7月7日

HPVワクチン騒動 vol.2 -HPVV(子宮頸がんワクチン)公費助成とワクチン行政-

<参院選>子宮頸がん予防ワクチン、助成公約相次ぐ

若い女性に増えている子宮頸(けい)がんの予防に有効とされるワクチンが昨年承認されたのを受け、主要各党が接種の公費助成を参院選公約に打ち出した。背景には、ワクチンが保険適用外のため計5万円程度(接種3回分)が自己負担となる現状がある。一方、昨年の衆院選公約で「子宮頸がんに関するワクチンの任意接種を促進」と唱えた民主党の参院選公約から子宮頸がんの言葉が消え、患者団体などに落胆が広がっている。【坂本高志】
  埼玉県川越市の穴田佐和子さん(37)は29歳の時に子宮頸がんを告知され、全摘手術を受けた経験から、05年に患者のためのサポートグループ「らんきゅう」を設立。今年5月、「公費助成推進実行委員会」などがワクチン接種の公費助成を求める要望書を民主党に提出した際、穴田さんも同席した。
  しかし、参院選公約では、現行1万3000円の「子ども手当」の上積み分を、「ワクチン接種への公費助成」などの現物サービスに代えられるようにするとの内容で、衆院選時に明記された子宮頸がんは消えていた。
  同実行委共同代表の土屋了介・元国立がんセンター中央病院長は「ほとんどの先進国で公費助成がなされている」と指摘。穴田さんは「目先の財源とかではなく、女性の命を守る政策を実行してほしい」と願う。
  一方、自民党の公約は衆院選時にはなかった「子宮頸がん予防ワクチンの定期接種も含め感染症予防を推進」が登場。子宮頸がんにかかった経験を持つ女優の三原じゅん子氏(45)を比例代表に擁立するなど、積極姿勢に転じた。
  公明党も公費助成を提唱。5月には「子宮頸がん予防法」を参院に提出(廃案)するなど、前向きに取り組んできた実績を放映中の政党CMでPR。社民党は「接種費用の軽減」を、共産党も「国の予算による定期接種化を実現」とうたう。
  ほかの主要政党の公約には接種の助成などへの具体的言及はない。ただし、みんなの党は自民党衆院議員時代に自公の「ワクチン予防議連」事務局長だった病院理事長、清水鴻一郎氏(64)を比例で擁立。清水氏は接種無料化を訴える。
 
【ことば】子宮頸がん
  子宮の入り口付近にできる。主に性交渉でヒトパピローマウイルス(HPV)に感染して起き、性交渉の経験がある女性の8割が少なくとも生涯に一度はHPVに感染するとされる。日本では年間1万5000人前後が発症し、3000人前後が死亡していると推計される。予防ワクチンは100カ国以上で承認されており、100種類以上の型があるHPVのうち、発症原因の7割を占める二つの型の感染を防ぐ。一定の助成をする市区町村は130程度(6月現在)。

7月5日11時39分配信 毎日新聞





我が国はワクチン行政が最も遅れた先進国です。
ワクチンには必ず副反応が伴い、
稀に重症な後遺症を残すこともあります。
しかし、そのリスクを鑑みても、
ワクチンは国民全体にとって利益がある場合に使う、疾病予防の手段です。
公衆衛生とは、国民というマスの健康問題を考えることですから、
ワクチンはまさにに公衆衛生のツールと言うことができます。


子宮頸がんの患者全てには、
HPV(Human Papilloma Virus)が存在します。
HPVV(Human Papilloma Virus Vaccine)というのは、
このウイルスからの感染を予防するために作られたワクチンです。
HPVVはウイルスに感染していない15-25歳の女性には
効果があるというのが現在までの研究結果の総括です。
(参照:子宮頚がんワクチンをどう扱うべきか?
 

HPVVが子宮頚がんの死亡率を何処まで下げるという事については、
はっきり分かっていません。
それは、HPVの他にもがんの原因はあり、
まだ分かっていない要因も数多く存在するからです。
また、上記の研究はアメリカで行われたもので、
日本人に有効かどうか、といった調査も十分とは言えない、
というのも事実です。

確かに、子宮頚がんの1原因である
HPV感染予防がワクチンでできる、
という事は画期的なことであることは確かです。
そして、効果的なワクチンであれば公費で負担する、
というのは当然のことだと思います。

しかし、日本のワクチン行政は、
他の先進諸国と比べて大きく立ち遅れています。
副反応に対する補償なども十分ではありませんし、
ワクチンの有効性を調べるための大規模疫学研究を行おうにも、
極めて難しい状況にあります。
これは、国が公衆衛生の概念を持ち合わせていないからです。

確かにHPVVは社会的インパクトの高いものであります。
しかし、他国では公費で導入されているけれど、
日本では公費負担がされていない、
極めて有効なワクチンが他にもあります。
細菌性髄膜炎菌ワクチン(Hibワクチン)がその代表例と言えるでしょう。 1) 2)
 
また、ワクチンからの感染が問題となっている
OPVからIPV※への切り替えも早急にしなければならない課題の一つです。
また、B型肝炎ワクチンの乳幼児接種も大切です。
 ※2種類のポリオワクチン
 OPV(Oral Poliovirus Vaccine)…生ワクチンで口から接種
 IPV(Inactivated Poliovirus Vaccine)…不活化ワクチンで注射
 (参照:日本と欧米諸国のワクチンギャップ)   

 
HPVVだけを持ち上げれば、
社会的に必要なワクチンが取り残されてゆく可能性があります。
それ故、ワクチン一商品至上主義的な取り上げ方には問題を感じます。

それよりも、ワクチンインフラ整備の早期徹底を
政権公約の議論として盛り立てて欲しいと思います。



=参考文献=
1)
Teare EL, Fairley CK, White J, et al
Efficacy of Hib vaccine.
Lancet, 17;344(8925):825-9, 1994

2)
Madore DV
Impact of immunization on Haemophilus influenza type b disease.
Infect Agents Dis. 5(1):8-20, 1996


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このひまわりの名前は「ゴッホのひまわり」。ひまわりには沢山の種類があるのです。


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