子宮頸がん ワクチン、小6に初の集団接種…栃木・大田原
医師から子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける児童=栃木県大田原市で2010年5月13日(代表撮影)
栃木県大田原市で13日、小学校6年生の女子児童を対象に、子宮頸(けい)がん予防ワクチンの集団接種が始まった。1人当たり4万5000円の費用を市が全額負担する集団接種は、市などによると全国でも初めてという。来年度以降も続ける方針。
市によると、市立小23校で来年1月までに、6年女子334人のうち希望者329人に接種する。福祉政策に力を入れており「女性の命を守ることは少子化問題の観点からも重要」として公費負担を決め1人3回分、計約3000万円を10年度予算で賄う。初日は金丸小の10人が接種を受け「がんになるのはいやなので、注射してよかった」「思ったより痛くなかった」と話したという。
立ち会った自治医大の鈴木光明教授(産婦人科学)は「接種率を上げるには集団接種が有効で、学校での接種は素晴らしい」と話した。
子宮頸がん予防には若年層へのワクチン接種が有効とされるが、3回で計5万円前後の費用がネックになっている。
5月13日23時7分配信 毎日新聞
日本のワクチン行政が
主要先進国の中で大きく立ち遅れていることは
以前にも書いたとおりですが、
今回は子宮頚がんワクチンについて
取り上げることにします。
子宮頚がんは30~45歳といった若い世代の女性に発生することが多く、
労働人口ならびに生産人口に影響するがんとして注目されています。
特に途上国では子宮頚がんが多発しており、
世界的にみると女性がんの第2位を占めるほど多いです。
原因としてはhuman popillomavirus(HPV)というウイルスが有名です。
HPVに対してはワクチンがあります。
ワクチンで予防できる唯一のがんと呼ばれるのもこのためです。
ウイルスによって引き起こされるがんで有名なものに
ATLという血液のがんがありますが、
こちらにはワクチンはありません。
さて、それではHPVワクチンはどの程度、
子宮頚がんによる死亡を減らせるのでしょうか。
ワクチンの効果を調べるには、
ワクチンを打つ群と打たない群に分けて、
2つの群での子宮がんの発生を比べることが必要です。
子宮頚がんの発生にはHPVだけでなく、
年齢、生活環境、人種差なども関わっていることが予想されますので、
ワクチンだけの効果を調べるには
こうした他の条件の影響を抑える必要があります。
ワクチンと子宮頚がんと両方に関与する条件を
交絡因子(第3の因子)と呼びます。
交絡因子の影響を抑えるためには、
統計的な処理でもある程度可能ですが、
ワクチンと子宮頚がんの関係に関する交絡因子は
すべて分かっているわけではなく、
未知のものも多々あると考えられます。
そのため、最初からワクチンを打つ、打たないという条件以外は、
調査する人たちが似ている必要があります。
例えば、年齢構成が同じであるとか、人種構成が同じであるとかです。
こうした条件をそろえるには
数が多ければ多いほどよいのです。
何百万という研究参加者がいれば
様々な条件が恐ろしいほどぴったりするのですが、
10人や20人ではバラバラです。
比較を行うときに既にあるデータを使う方が手はかからないのですが、
過去のものですからどうやって人を選んだのか、
どのようにデータを集めたのかなど、
分からないこともたくさんあります。
ですから新たに調べる方が良いのです。
精度高く管理された研究をRCTと呼びますが、
これについては前回の記事に詳しく書いてありますので、ご参照ください。
ワクチンの効果をみるために、
欧米で多くのRCTが行われました。
これを総括したMeta-Analysisによれば、
15-25歳の性経験がない女性に対しては、
高い予防効果を持つことが報告されています。
HPVというウイルスは性交によって感染しますから、
既に性経験がある女性のほとんどはHPV感染したことがあり、
そういう集団にはワクチンは無効です。
こうした結果をもとに米国はじめ諸外国では
ワクチンが認可されました。
現在日本でもHPVワクチンが認可されていますが、
問題はないのでしょうか。
最大の問題点はワクチンの有効性と副反応についてです。
欧米で認可されたワクチンは
HPV6・11・16・18という4価のワクチンと、
16・18型に対する2価ワクチンです。
HPVには様々な種類がありますが
(インフルエンザにもAH1N1やAH5N1等があるのと同じ)、
欧米では16と18型が多いのです。
しかし日本では52、58型が多いと報告されています。
ですから、日本で認可された欧米型ワクチンの有効性を実証するには、
日本人の中でRCTを行う必要があります。
また、副反応についてもワクチン導入と同時に
正確なデータの収集と解析が必要です。
そして必要に応じて情報をオープンにすることが
厚労省に求められることです。
長期的にみた場合、
どの程度ワクチンが子宮頚がんを減らせるか、
頚がんスクリーニングとの比較をした場合の費用対効果はどうか、
どんな副反応があるか等、大規模な疫学調査なしではわかりません。
日本では大規模な疫学調査が非常に出来にくい環境にあります。
それは国がその必要性を理解していないことがあります。
H1N1豚インフルエンザワクチン導入に関しても、
副反応に関する補償制度などの
ワクチンインフラは手つかずでした。
すなわち、重篤な副反応が起こっても十分な補償を受けられず、
訴訟という手段しか残されていないという悲劇があります。
今後新しいワクチンはどんどん増えてくるでしょうから、
豚インフルエンザで明らかになったワクチン制度の不備を
早急に解決することが必要でしょう。
そして、国策として必要であるワクチンに関しては
公費を投じることが当然です。
そもそもワクチンとは、国民というマスを、
ある疾患から守るために使うのですから、
国の事業そのものといえましょう。
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