2010年10月4日

HPVワクチンの公費助成にかかるもう一つの懸念

なぜそんなにHPVワクチンの導入を急ぐのか、
という問題については今まで様々な媒体で発信してきました。
今回は、その性急な活動に関する
新たな気がかりを問題提起したいと思います。

HPVワクチンの任意接種費用を助成する地方自治体数は、
2010年7月まではヒブワクチンの費用助成実施自治体数を下回っていたのですが、
現時点では逆転し、任意接種費用助成自治体数では
HPVワクチンがトップの座に躍り出たもようです。

長年、予防接種行政の改善を訴えてきた小児科医から見れば、
HPVワクチンの取り上げられ方は
その背景に十分な費用対効果等の検証も無いまま「極めて異常な増え方」であり、
お祭り騒ぎと揶揄されています。

HPVワクチン公費助成の費用対効果について、
地方自治体の大きな懸念の一つは、
接種した女児が、ワクチンの予防効果がでる10年、20年先に
地元に残っているかどうか分からないということです。
そうであれば、予防効果の有効性が確立されている、
ヒブや小児用肺炎球菌、水痘、ムンプスを進めたい、
と感じているところも少なくないようです。

このような効果判定の検討なしに助成に踏み切った自治体は、
遠くないうちに費用対効果を含めた成果を求められるでしょうし、
その段階で、その不適切な政策決定プロセスも含めて、
問題視される可能性もあります。
その場合、それ以降の任意接種ワクチンへの費用助成を
新たに起こしにくくなるというデメリットが残ります
(そもそも定期だの任意だのという考え方自体がおかしいのですが)。

我が国がワクチン後進国であることは、これまで書いてきたとおりですが、
科学的根拠に基づかないやりかたは、
早期に導入が必要な他のワクチンへも影響が及ぶことを考える必要があると思います。



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