2011年、史上最大級の地震と、原発事故が起こってから1年が過ぎました。
各地で追悼の式典などが行われ、メディアも特集を組みました。
私自身、親族が、仙台市若林区に居住しており、連絡が取れない状況でした。
それ故、被災して命を落とされた方々のご家族ならびにご友人達の悲しみを、
少しは理解できるのではないか、と感じています。
その意味で、鎮魂という儀式はとても大切なものだと思います。
しかし、それと同時に忘れてはならない事があります。
それは、震災に引き続く原発事故で政府がいかに対応を怠ったか、という事です。
その中でも最も重要な問題は、放射線被ばくです。
放射線被ばくには、外部被ばくと内部被ばくがあります。
外部被ばくは、外側についた放射線ですから、
衣類を脱いだり、シャワーを浴びれば取れます。
けれども、体の中に入った放射線の影響は、
それが体外に出てゆくまで待たねばなりません。
どれくらい体内に止まるのかは、放射線の種類によって異なります。
一般的に、放射線の影響が少なくなる物差しとして「半減期」が使われますが、
例えばストロンチウムは、骨の中に取り込まれ、
体内動態上、出てゆきにくいものですから、
一概に半減期だけをめやすにする訳にもいきません。
放射線は、食物や呼吸と共に体内に取り込まれます。
もっとも高い線量が降り注いだのは、3月から4月です。
内部被ばくを少なくするためには、高い放射線量の時期、
できるだけ線源から遠くに移動することです。
しかし、それを躊躇した政府によって、
多くの人たち、特に、放射線の影響を受けやすい小さな子供たちは、
浴びなくても良い、放射線被ばくをしたのです。
その影響はどうなのでしょうか。
放射線の健康被害は様々なものがありますが、
特に問題となる発がんのリスクは確実に増えたと言えます。
そして、その程度を調べるには、将来的に追跡して、
どの程度がんを発生するかを調査する以外にはありません。
しかし、政府(特に厚生労働省)は、初期のデータ集めを怠りました。
データはごく初期に取り始めなければ意味がありません。
それは、時間が経つにしたがって、情報があやふやになり、
信ぴょう性のある結果が出せないからです。
1.すみやかに避難させなかったこと
2.解析に値するデータ収集を怠ったこと
はもっとも大きな政府の責任です。
この無責任体質は今に始まったことではありません。
水俣病、薬害、インフルエンザ、など、すべて同じことの繰り返しです。
今後、国家を揺るがす健康危機は再度訪れるでしょう。
しかし、これ以上国民を危険にさらすことはやめていただきたいものです。
今回の事故対応について、正確な事実をまとめ、
政府の問題点について明らかにすることが、
震災で被害を受けた方たちへの一番の償いになる事です。
それを決して忘れてはならないと思います。
そのような思いをこめて書いたのが今回出版した、『厚労省が国民を危険にさらす』です。
ご一読いただければ幸いです。
2012年3月9日出版(ダイヤモンド社)
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