生活保護も不正も増、自治体調査に限界 2012.5.26 01:13 msn産経ニュース
人気お笑いコンビ「次長課長」の河本(こうもと)準一さん(37)の母親が今年4月まで受給していたことでクローズアップされた生活保護制度は、生活困窮者に対し、最低限度の生活を保障する“最後のセーフティーネット”といえる。高齢化や不況を背景に受給者数が過去最多を更新し続ける一方で、不正受給も増加の一途をたどっている。厚生労働省によると、今年2月に全国で生活保護を受給した人は209万7401人。戦後の混乱の余波で過去最多だった昭和26年度の数字を昨年7月に上回って以降、8カ月連続で最多を更新している。平成24年度は生活保護費として約3兆7232億円が当初予算に計上された。不正受給も22年度までの5年間、増加し続けている。22年度は過去最悪の2万5355件、計約128億7426万円が不正に支給された。不正で最も多いのは収入がありながら「ない」と偽って申告するケース。今月18日には年収が1億円以上あるのに熊本市から生活保護を受けていた投資勧誘業の男が熊本地裁で懲役3年、執行猶予5年、罰金3000万円の判決を言い渡された。不正が絶えない背景には扶養義務を親族がどこまで負えるかについての判断や確認が難しいこともある。生活保護は原則として世帯単位で決定されるため、河本さんと別居する母親は、別世帯として判断される。民法では親族間の扶養義務が定められ、保護が申請されると、保護決定を行う自治体が親や子供など扶養義務者による仕送りの可否などの調査を実施する。
ただ調査への回答は自己申告で、離れて住んでいる親族には文書で調査を行うことも多い。申請者親族の資産調査は可能だが、調査で照会を受ける親族らには法律上の回答義務はなく、銀行などに個別に確認するにはとても手が足りない。河本さんは会見で「収入が安定せず、いつ仕事がなくなってもおかしくない不安の中でやっていた」と説明し、自分の判断で母親への援助額を決め、その一方で生活保護を受けさせ続けていたと説明した。東京都のある自治体の担当者は「立派な家に住んでいる親族に『住宅ローンがあるから』『子供の教育にお金がかかる』と断られたこともあった」と話す。厚労省の担当者は「収入が不安定でも、その時点で扶養可能な収入があるのに扶養いただけない場合は、文書だけでなく職員が出向き状況を確認して相談する必要がある」としている。
■生活保護 最低限度の生活を保障し自立を助ける制度。国が定める最低生活費に比べ収入が少ない世帯に差額分を支給する。食費や光熱費に充てられる「生活扶助」、家賃に当たる「住宅扶助」などがある。費用は国が4分の3、地方自治体が4分の1を負担するが、自治体、家族構成、年齢により保護を受けられる基準額は違う。例えば、東京23区に住む夫33歳、妻29歳、子供4歳の家族が保護を受けた場合、生活扶助は17万2170円。民間住宅を借りる場合は、さらに上限6万9800円の住宅扶助が出る 。
他、「生活保護制度めぐりさまざまな問題 「マニュアルDVD」も」 フジネットワークニュース 2012.5.25 18:51などもご参照ください。
今回は、生活保護について取り上げてみたいと思います。
厚労省によれば、「生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、
その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、
健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、
自立を助長することを目的」とする趣旨で施行されています。
すなわち、社会保障のひとつです。
人間、どのように頑張っても、
様々な要因で自立した生活を送れなくなることがあります。
リストラ、病気、家族の問題などが、その代表例と言えるでしょう。
「困ったときはお互い様」で、
こうした状況にある人を公費で補助することは、
決して悪い事ではないと思います。
しかし、今回の報道で問題となっているのは、
生活保護の受給者が過去最大になり、公費を圧迫していること、
また、本来、生活保護がなくても自立できる人たちが、
その恩恵にあずかっている、という事です。
ただでさえ、切羽詰まった国や地方自治体の台所事情の中、
本来必要でない部分の支出を余儀なくされることは、
国の苦しさだけでなく、財政を支えている国民にとっても、
受け入れられられるものではありません。
それだけでなく、「自立を支える」ための制度が、
逆に自立しない、依存的な人たちを生んでいるという事は、
社会的に大きな問題です。
現在、生活保護の申請に関して、その窓口となる地方自治体は、
申請者の内情について調査を行う権限は大きくありません。
それは、資産調査などを行う場合、申請者の同意が求められるからです。
従って、仮に、申請者が虚偽の資産報告をしてきても、
その真意を明らかにする仕組みがないのです。
こうした現状は、是正されるべきだと思います。
しかし、今回の報道は別の側面からみた問題もはらんでいます。
それは、本当に生活保護を必要としている人が、
今後、申請しづらくなったり保護を受けられない、
といった状況を生むという事です。
繰り返しますが、自分個人の力ではどうしようもなくなった時、
それを一時期支え、自立を促す制度は、
国家にとって非常に重要なものだと思います。
厚労省審議会の委員である、長崎大学教授の林徹氏から、
以下のような私信が送られてきました。
「社会保障分野の専門家に共通していると感じることは、
マズロー流の低次欲求にしか関心を持っておらず、
人が働くことと高次欲求との関係を軽視している、ということです。」
マズローは、人間の欲求を、5段階に分けた説を提唱しました。
低次の欲求とは、人間の本能ともいうべき、
「食べる、飲む、寝る」といったものです。
これに対して、高次の欲求とは、
人間関係を築いたり、人に認められたり、自己実現の可能性を追求する、
といったものです。
林氏の指摘は、非常に的を射ていると感じます。
なぜなら、本来、生活保護の目指すものは、自立であり、
とりもなおさず、それは「社会的」な自立です。
ところが、多くの議論は、
生物的に生きられる最低ラインの議論に終始しています。
憲法25条に謳われる「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する上では
労働=高次の欲求という側面からの議論が絶対に必要であると思います。
また、このような観点から、生活保護の見直しが行われれば、
誰が、それを必要とするのかといった、
合理的、理性的な見極めが今よりは出来るようになるのではないでしょうか。
少なくとも、現状の生活保護は、
「子ども手当」同様のばらまき政策である感は否めません。
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