2014年10月14日

エボラ出血熱~感染症危機管理の立場から~(1)

今回の記事は、世界の脅威となっている感染症の一つ、エボラ出血熱に関してです。
エボラ出血熱は1976年以降、2,3年刻みで流行しています。2014年にも流行が起こり、9月 28 日までに、7,157 名の患者(疑い例も含む。うち 3,330名死亡。)が報告されています。2013年にギニアで2歳の男の子が発症しました。直後に家族が死亡し、それ以降周辺地域で感染が拡大し、5月がシエラレオネ、6月にはリベリアに感染が広がりました。そして、航空機を利用した感染者により、7月にはナイジェリアに波及しました。また、今般、米国において、リベリアからの到着4日後に発症し、エボラ出血熱であることが診断された患者が1名死亡しています。
 エボラ出血熱とは、1976年、スーダンとザイールで初発例が確認された、ウイルスによる感染症です。この病気を引き起こすのはエボラウイルスです。エボラウイルスは、RNAウイルスで、エンベロープ(外套)を持っているため、アルコールや石鹸による消毒が容易にできます。また次亜塩素酸も有効です。一方、人間の体の外に出ても数日間生きながらえる、寿命の長いウイルスです。
エボラウイルスに感染すると、潜伏期と呼ばれる、症状が出ない時期が221日あり、発熱、頭痛などの風邪と同様の症状が出てきます。その後、吐き気、発疹などが出て、急速に症状が悪化します。口や鼻などの粘膜からはじまって、全身から出血し、臓器の働きが悪くなって(多臓器不全)、最悪の場合死に至ります。致死率は、5090%と報告されています。ただし、今回のエボラ出血熱では、過去の流行と比較して、47%という高めの生存率となっています。
エボラウイルスはもともと、オオコウモリが持っていました。西アフリカなどでは、このコウモリを食用として捕獲したため、直接ヒトに感染したと考えられています。ヒトからヒトへの感染は、直接エボラ出血熱患者の血液や体液(汗、唾液、精液、大小便、吐物など)への接触が唯一の感染経路です。一緒の空間にいたというだけではうつりません。また、発症した患者が感染力を持つのは、熱などの症状が出てからで、それ以前の潜伏期(ウイルスに感染しているが症状は出ていない時期)にはうつす力はありません。しかし、病気が治った後もしばらくの間精液中にはウイルスが分泌することが報告されています(7週間前後)。
治療法ですが、現状では特効薬はありません。また、はっきりと有効とされるワクチンも存在しません。ですので、症状に応じた対症療法が治療の主体となります。
それでは、どのようにこのウイルスから身を守ったら良いでしょうか。まずは、普段から手洗いなどを励行し、不潔な手で目などをさわらない、といった基本的な感染症予防を徹底することです。もし、患者が発生したという情報があれば、発症した人に近づき接触することは避けてください。また、流行地においては、野生動物とその生肉への接触(食べることも含む)も避けることが必要です。

繰り返しますが、エボラウイルスは患者に直接接触する(汗、唾液、血液や体液などから)ことから感染します。空気感染の様式をとらないので、発症している患者に直接触れない限りは、感染の機会はないというのが原則です。ウイルスに関しては基本的な消毒、洗浄が有効で、普段からの感染症に対する一般的な予防が、最も大切なのです。