2011年3月16日

福島原発を、危機管理の立場から考察する vol.1

福島原発の状況について(危機管理の立場から)

福島原子力発電所は、1960年代に建設された、比較的古い施設です。
史上最大級と言う大震災において、
爆発等による放射能汚染が懸念されています。

福島原発については、メディアなどで様々な報道がされています。
そのため、危機感を抱いている人も多いと思います。
そこで、原発の状況について、危機管理の立場からまとめてみたい、と思います。

放射線は、自然界にも存在し、私たちは日常的に放射線をうけています。
問題はその量です。
なぜなら、多量の放射線を浴びることにより、健康被害をうけるからです。
放射線量はSv(Sievert)という単位が使われます。

多くの被ばく量を浴びると、様々ながんの発生が多くなります。
それ故、原子力発電をするための原子炉は、
何層もの頑丈なステンレス鋼で覆われています。

http://www.fepc.or.jp/learn/hatsuden/nuclear/genshiro/index.html

それでは、今回の震災における、原子炉のダメージによる、
放射線量はどれほどだったのでしょうか。
例えば、数日前に発生した、一時間当たり500マイクロSvと言うものでした。
これがどの程度の量か、と言えば、原発から20km離れたところでは、
一時間あたり、1.25マイクロSvくらいです。
もし、この地点に1カ月立ちつくしたとしても、国の安全基準である、
1年間に1000マイクロSv、という値には届かない事がわかります。
ちなみに、東京からシカゴに向けて10時間のフライトで浴びる放射線量は、
50マイクロSvです。

さて、3月15日、新たなる爆発とともに、
1時間当たり、400ミリSvという放射能被害が確認されました。
これは20Km離れたところでは、1ミリSvに相当します。
すなわち、瞬時にして、1年間に浴びる線量と同程度、と言う事が出来ます。
場所によっては、1年間に浴びる上限の10倍以上の被ばく量、と言えます。

そうはいっても、こうした線量を、毎日浴び続けると言う事自体は考えにくい事ですし、
現状では、受けたとしても、人生のある一時期の出来ごと、と言えるかもしれません。
そうなれば、それによって受ける健康被害は、特に重篤なものは予想されません。
報道で、「400ミリSvに惑わされるな」というのは、こうした理由によります。
http://www.kimuramoriyo.com/moriyotsubuyaki-medicine/20110314.html

しかし、危機管理の第一義は、「最悪の事態を想定する」と言う事にあります。
故に、これ以上悪くならない、と言う保証はないということです。
また、危機管理上の第二の掟は、「常に冷静に行動する」、と言えるでしょう。

こう考えると、「全く問題がない」という超楽観的な報道や、
「東電が1時間も官邸に連絡しない」といって怒りをあらわにしたり、
首相自ら、原発を訪れる、と言う事は、国民に対して、いらぬ不安を与える事になります。

政府と東京電力だけでこの事態をまかなえないのであれば、
国内、国外に向けて、専門家を要請することを、積極的に行うべきだと思います。
今回は、史上最悪の震災ですから、
世界的危機として、国外に援助を求めることは、恥ではありません。
むしろ、日本人特有の「身内の事」として処理してしまう事により、
「適切な危機管理対策を怠った」として、
国際社会から非難を受けることにもなりかねません。

日本は、ODA先進国として、国際貢献をしているわけですから、
その一環として、原子力関係の専門家を招へいする、という事も
十分可能な事だと思われます。

また、国内、特に原発付近の住民にとっては、
「今後どんな事が待ち受けているのか。政府はどうした対応をしてくれるのか」
という不安が大きくなっていると思われます。
繰り返しますが、危機管理の基本は、
「最悪の事態を想定し(1)、冷静に対応する(2)」ことにあります。

とすれば、もっとも悪い事態を想定し、念のため、
「特にとどまる理由のない人以外は、県外へ移動する」
という勧告を出しては如何でしょうか。
もし、仮に大げさな措置だったとしても、「政府はここまでやってくれるのだ」
という国民の安堵感をもたらすことにもなるでしょう。

実際、国によっては、「当面の間、関東からはなれるように」との勧告を出しています。
そのため、日本を離れる人たちも、私の周りにちらほら見かけます。
他国や他の地域に旅行に出かける人もいれば、自国に一時帰国する人もいます。
いずれも、特に大きなパニックはありません。

こうした取り組みは、「寝た子を起こすな」という、
日本の今までの考えとは、相反するものかもしれません。
しかし、これからも起こるであろう、国家の危機に置いて、
発想の転換が必要な時期に来ていると思います。



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