2011年3月17日

福島原発を、危機管理の立場から考察する vol.2

アメリカ大使館が、「福島第一原発から、半径50マイル(約80km)圏内に居るアメリカ市民」
に対して、事実上の退去勧告を出しました。
この、80kmという数値は、アメリカ原子力規制委員会の勧告に基づくものです。
http://www.nrc.gov/about-nrc/radiation.html
すなわち、「核施設から50マイル半径内にいると、
平均1年間に0.01ミリrem(レム)の放射能汚染を受ける可能性がある」
というデータに基づいたものです。

日本では現在、放射線被ばく量の単位として、
Svが使われていますが、以前はremを使用していました。
1Svは、100remに相当しますから、Svになおすと、0.0001Sv、
つまり、0.1ミリSvの放射線を受けることになります。
これは、日本でも定められている、放射線被ばく量の上限です。

放射線量は核心からの距離の他、風向きや、天候によって左右されますから、
当然この値より低くもなり、高くなる可能性もあるわけです。

このデータに基づき、原発付近の人たちに対する対応を考えるべきだ、
というのは、前回のブログにも書いたとおりです。

さて、原発の状況を見る限り、決して楽観視できない状況にあります。
その最も大きな原因として、「誰も内部でなにが起こっているかわからない」
という状況にあるからではないか、と思います。

すなわち、政府の「一生懸命やっている」というメッセージだけで、
具体的なデータが殆ど示されていない状態なのです。
原発に関わっているのは、主に東京電力の職員たちですが、
彼らたちは、技術者ではあるけれども、所謂、原子力の専門家ではありません。
また、経済産業省にも、専門家集団がいるとは思われません。

前のブログで、危機管理の基本は、
(1)最悪の事態を想定し、(2)冷静に行動する、と書きました。
続けて、今回は、(3)臨機応変に行動する、事と、
(4)詳しいデータ収集、解析をし、後世の役に立てる
ということについて、論じたいと思います。


猫の目のように刻々と移り変わる状況下において、
既存のやり方が、通用しなくなることはしばしばあります。
それに気がつきながら、方向転換をしないと、「想定外」という人災を引き起こしかねません。
まさに、今の状況がそれに当たると思います。
東電と政府だけで、抑えきれない状況なのであれば、
それ以外に協力を求めることが重要です。
すなわち、状況に応じた柔軟な方向転換が必要だということです。
前回にも書きましたが、このような危機的状況では、自分たちの容量を超えたため、
他に助けを求めることは、決して恥ではありません。
逆にそれをしなくて、多大な被害を生じたとしたら、元も子もなくなります。


内外の専門家を招聘する必要性についても、前回書いたとおりですが、
海外の専門家を入れることにより、マンパワーが増え、
的確なデータが取れるようになります。
推察するに、現状下では、目の前にある出来事に対応するのが精いっぱいで、
政策決定の根拠となる、正確な情報が把握されていないのではないかと思います。
海外の専門家とは、所謂先進国の人たちばかりではありません。
日本のODAの助けで、欧米で学んだ開発途上国の人材は、世界のトップクラスです。
彼らたちをODAの一環として招聘し、技術的な支援を要請するとともに、
正確なデータをとり、それを分析して発表してもらう、というのは、
このような未曾有の危機にされされた、我が国だけができることです。

今回のデータをきちんと公表し、将来に向けての危機管理に役立てることが、
危機管理の大きな目的の一つと言えるでしょう。
このたびの震災で、被害にあわれた方、
尊い命を落とした方たちの犠牲を無駄にしないよう、
後世に役立てることこそ、私たちがしなければならないことなのですから。



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