2011年3月19日

日本政府の援助拒否ー危機管理の立場から考察する

米国で「日本に募金するな」といった報道がされ、
米国で地震の救済活動にあたっているNPO等では、ショックを受けています。
こうした報道がなされた背景には、「日本が援助を受け取ろうとしない」
という趣旨があるようです。
http://www.nytimes.com/2011/03/16/world/asia/16charity.html?_r=3&scp=1&sq=Japan%2C+Charity&st=Search

なぜ、このような事が起こるのでしょうか。
実際、我が国は人的にも物的にも大きな打撃を受けていますから、
金銭的な援助は大いに喜ぶべきではないか、と不思議に思う人も多いでしょう。

一つの原因として、今の予算の枠組みでは、
「想定外に国に入ってきたお金は、使えない」ということにあると、思います。

例えば、各国持ち回りで、国際会議が開かれたとします。
どの国も予算的に苦しいわけですから、参加国は、その負担をなくすため、
「参加費用」を支払う事にしました。
さて、ある年、日本での会議開催が決まりました。
この会議の予算は、あらかじめ、前年度に組み込まれてあります。
「明日、国際会議開きたいから、お金よろしく」と言う事は、まず出来ないのです。

会議の予算に関しては、会場代金、スタッフ、お茶代に至るまで事細かに計算されており、
その通りに使わなければなりません。
それ故、「参加費」という臨時収入は、貰っても、
国のお金(国庫金)として入れる事が出来ないのです。

予算は、主に国の税収によるものです。
いきなりビル・ゲイツが、日本国に「10億円寄付します」といっても、
民間団体は受け取れますが、国が「臨時収入があったから、すぐ予算の足しにしよう」
という、融通性がないのです。

今回の「日本に対する募金」についても同様の事が言えます。
つまり、国としては、「貰っても使えないお金」になってしまうからです。

予算は、「財政法」と言う法律に縛られています。
一度決めた予算の使い方を変えようと思うと、国会を通さなければなりません。
今回の震災のためのお金を、「子供手当ての上乗せ分」からまわす、
などという議論が起こっているのは、そのためです。

また、話は少し異なりますが、年度末になると、その年の予算を消化しようと、
特に緊急性のない出張や突貫工事が増える、というのも、
予算の使い方などの、融通の利かなさのためです。

つまり、予算とは、融通が効かない、お金なのです。
それは、国家の台所を扱うと言う意味では、当然のことと言えるかもしれません。

もし、今回の募金を日本が拒む理由として、今まで書いてきたような事が原因だとしたら、
予算の使い方、というロジスティックな問題に対応できていない、
すなわち「臨機応変」に対応する、という「危機管理」が出来ていないと言う事になります。
(参照 福島原発を、危機管理の立場から考察する vol.1  ,  同 vol.2
このような些細な事で、国際社会の批判を受けることは、
国益を考えた時、決して良い事ではありません。
緊急時に予算を動かしやすくするための法改正が、速やかに導入されるべきだと思います。
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