2010年6月6日

映画上映拒否から見る捕鯨問題

<米映画>「ザ・コーヴ」都内上映館ゼロに イルカ漁批判


 和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に取り上げた米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」(ルイ・シホヨス監督)の上映中止問題で4日、東京と大阪の2館も中止を決め、東京都内での上映館はなくなった。2年前にドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の上映中止が相次いだ際は、街宣活動実施後に中止が決定されたが、今回は抗議活動の予告だけで中止の動きが広がり、表現の自由の萎縮(いしゅく)を懸念する声が上がっている。

 「反日映画の上映は許せない。中止を求める」。今年3月、ザ・コーヴの配給会社「アンプラグド」(東京都目黒区)に、ある団体から電話が入った。この団体は、首相の靖国神社参拝を求める活動などをしている。電話は、米アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した時期に重なる。

 4月になると、社長の自宅前や事務所の周辺でマイクを使った抗議活動が早朝から行われるなど、抗議活動がエスカレート。同社は抗議活動の中止を求める仮処分を東京地裁に申請し、認められた。

 ただ、最近までは東京や大阪などの全26館での上映方針に変更はなかった。中止のきっかけは、この団体がホームページで今月2日、上映を予定していた「シアターN渋谷」や同館を運営する出版取り次ぎの日本出版販売(東京都千代田区)に対する街頭宣伝や抗議活動の実施を予告したことだった。3日に中止を決めた同社は「観客や近隣への迷惑がかかる可能性があり、上映を中止した」と理由を話す。

 また、4日に中止を決めた東京の「シネマート六本木」と大阪の「シネマート心斎橋」を巡っては、両館を運営する「エスピーオー」の関連会社に対し、5日に街宣活動するとの予告があった。エ社は「関係各所に迷惑をかける可能性があるため」と中止を決めた。関係者は「自宅への抗議が中止の大きな要因になった」と明かす。

 フリージャーナリストの綿井健陽さんは「こんなに簡単に中止が決まっていいのか。『面倒な映画の上映はやめておこう』という萎縮を生みかねず影響は大きい。上映を待ち望んでいる人もいるという声を関係者に伝えることが重要だ」と指摘する。

 シホヨス監督は4日、「一部の過激な人たちが東京の映画館を脅かしていることを知り大変残念だ」とのコメントを発表した。

6月4日20時59分配信 毎日新聞




イルカ漁を描いた映画上映が
賛否両論を呼んでいます。
今回はイルカ漁問題と非常に近しい
捕鯨問題とともに考えてみたいと思います。


イルカ漁と捕鯨が何故近いかというと、
生物学的に似通った種類であることと、
我が国はイルカもクジラも採っており、
それを食用としているからです。
イルカ肉はクジラ肉と混ぜて販売されることが多いので、
捕鯨問題≒イルカ漁と置き換え得ることができます。
では、日本だけが捕鯨をしているかというと、
そうではありません。
ロシア、ノルウェー、アイスランド、カナダなど35の国があります。
一方捕鯨に反対している国は
オーストラリア、ニュージーランド、ラテンアメリカ等です。

なぜ、捕鯨やイルカ漁がこんな大きな問題になるのでしょうか?


第1に鯨やイルカは種として
絶滅の危機に立たされているのにもかかわらず、
それを採り続けるのは
自然保護の観点から違法だという意見です。
確かに、シロナガスクジラ、ヨウスコウカワイルカなどは
絶滅の危機にあり、国際的に保護されていますし、
種類も少なくなってきているのは事実です。
しかし、鯨やイルカは食物連鎖の頂点にあり、
鯨やイルカが増えすぎれば
中小の魚たちが少なくなるという大きな弊害があります。

自然界でいえば食物連鎖の頂点に立つ、
predatorは人間なのですから、
人間を保護するためには何をしても良い、
もっと言えば、バイオマスを一番必要とする
先進国の人間だけを保護するためには何でもすべきだ、
という議論と同じように思えます。


第2に鯨やイルカは他の海洋生物と比べて
知能が高いから殺してはいけない、
という主張です。
知能の問題と捕獲を一緒に論じるのは無理がありますし、
だったら知能が低い魚たちは採って食べてもいいのか?
という反論が当然出てくるところです。
むしろこの主張はホエールウォッチング等の
商業活動と関わってくる議論といえます。


第3に、鯨やイルカを食べることに対する
安全性に関する点です。
海洋でいえばプランクトンといった
一番小さなものを小さな魚が食べ、
次にもう少し、大きな魚が順々に食べ、
最後に鯨やイルカが自分たちより小さな魚を食べます。
現在の海洋汚染の問題から、
鯨やイルカは水銀などの有害物質が蓄積している分量が多いから
食べては危険だ、ということです。
これは鯨に限らず、
マグロなどの大きな魚についても同じことが言えます。
最後に食べるものほど、有害物質が濃縮してくるからです。
しかし、これは食べる量の問題です。
どんなに小さな魚でも量を食べれば有害物質は多くなります。


私は、鯨やイルカを採って食べるのは
その国の食文化の違いによるものだと思います。
例えば、オーストラリア等ではカンガルーを食べます。
しかし私たちにとってカンガルーを食べることは
馴染みのないことであり、
「食べたら可哀そう」という声も聞こえてきそうです。

 
実際、現在捕鯨に反対している国々も、
18~19世紀にかけては捕鯨を行っていました。
それは鯨から油を採るためです。
しかし油田ができて必要なくなったから、
鯨を採る国を非難するというのは
何ともしっくりこない話です。


捕鯨やイルカ漁が動物保護の立場から許されない
と言うのであれば、
人間は全ての動物を食べるのを
やめなければならないでしょう。
植物でさえ、食べられる際に「痛い!」
というという人もいるくらいですから、
そうなってくると人間は何も食べてはいけないことになります。


映画の上映を禁止するのではなく、
日本の捕鯨やイルカ漁に対して批判をする国々に対しては、
文化の違いであることをきちんと政府として伝えることが必要です。
外交とは海外からの意見を鵜呑みにすることではなく、
バランス感覚をもって
対等の主義主張をすることも必要なのですから。


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