2010年6月22日

「乳がん検診、TBSに医師らが中止要望」はどんな意味があるか

番組きっかけの乳がん検診 TBSに医師らが中止要望

乳がんのため24歳で亡くなった女性を取材した番組「余命1カ月の花嫁」をきっかけに、TBSが展開している20~30代女性を対象にした乳がん検診を中止するよう求める要望書を、医師や患者ら38人が9日、同社に提出した。20~30代への乳がん検診の有効性に科学的根拠はなく、不必要な検査につながるなど不利益が大きいと指摘している。

 要望書を提出したのは、中村清吾・昭和大教授や上野直人・米MDアンダーソンがんセンター教授ら、乳がん治療の第一線で活躍する医師のほか、がん経験者、患者支援団体のメンバーら。

 「科学的根拠のない検診を、正しい情報を発信すべきテレビ局が行うことは倫理的に問題が大きい」として、検診の中止を含め活動の見直しを求めた。また検診を20~30代女性に限定している理由などを問う公開質問状も内容証明郵便で送った。

 国は指針で、乳がん検診は40歳以上を対象に、マンモグラフィー(乳房X線撮影)検査と、医師が胸の状態を診る視触診の併用を推奨している。要望書は、20~30代女性への検診は、放射線被曝(ひばく)やストレスを増やし、がんを見逃す場合もあると指摘。メディアの役割は、異常を感じたら医療機関へ行くべきと呼びかけることだとした。

 TBSは2008年から検診を実施。これまでに約7千人がマンモ検診を受けた。今年も、15日から舞台で上演されるのと連動し、東京や大阪などでエコー(超音波)検診を実施している。(岡崎明子)

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 TBSのコメント 要望書で指摘されている点は、現在の医学界の基準的な考え方で、反論するところはない。ただ、40歳未満の乳がん罹患(りかん)者は年々増えており、あくまでも自己責任・自己負担で検査を受けることは意味があると考えている。 asahi.com 2010年6月10日



TBS「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」の
内容見直しを求める要望書提出について
http://www.cancernet.jp/kenshin/index.html


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乳がんのスクリーニング検査を行ったとき、
検査を行わなかった場合と比較して
どの程度、効果があるか、と言うことについては
以前の記事にも書いたとおりです。
(「乳がんスクリーニングは効果があるか」vol.1 vol.2

この場合の効果と言うのは、
スクリーニングを受けることによって、
どれだけ命が助かるかどうか、を言います。

これを調べるには、スクリーニングを受けた群と受けない群を、
将来に向かって追跡調査し、
2つのグループの乳がんによる死亡率の違いを
比較することが必要です。

アメリカでは大規模な追跡調査が行われ、
現在出された結論は「スクリーニングによって、
乳がん死亡が低下したとする明らかな根拠無し」ということです。

今回医師らが、テレビ局に対して
要望書を出したのはこの研究結果によるものです。

スクリーニングは税金で行われます。
ですから効果のないスクリーニング検査は無駄です。

それだけでなく、病気でないのに、
病気だと誤って診断される確率(擬陽性率)も
検討されなければなりません。

今回の研究結果では、10年受け続けると約半数の人が、
どこかで間違って「あなたはがんの疑いがあります」と
言われる可能性があると言われています。
最終的に間違いであっても、精神的なストレスは大きいですよね。

がんの発生には様々な要因があります。
年齢、人種差、生活習慣の違い、などなど、
分かっていないものも多くあると言われています。

今回の報道でもっとも重要なのは、
科学的根拠に基づかない報道がされたというだけでないと思います。
日本では、アメリカが行ったような大きな調査(疫学研究調査)が、
殆どなされていないという大きな欠点があります。
例えば肺がん検診は、日本で広く行われていますが、
主要先進国では「有効でない」として行われていない代表例です。
しかし、日本で大規模な追跡調査がなされたという話はききません。

前にも書いたとおり、
がんには人種差や食生活などの生活様式が
大きく影響していることが分かっています。
アメリカ人での結果が即日本人に当てはまるか、
といえばそうではありません。

がんは放っておけば命を落とす病気です。
しかし、有効でないスクリーニングをしても、
無駄なだけでなく、いらぬ副産物ももたらします。

今回の報道をきっかけに、
政府はスクリーニング検査に関する大規模調査が出来る予算と、
インフラを整える事が必要でしょう。

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